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復元された60年前のEVを解説

先ごろ復元された60年前のEV、「たま電気自動車」について、日産の開発部門有志「名車再生サークル」の磯部雅彦が解説します。

日産「名車再生サークル」 磯部雅彦:

「たま電気自動車」は1947年製のクルマです。このクルマが1947年、昭和22年になぜつくられたか?そこが疑問だと思います。

当時日本は戦争に負けて、進駐軍に工業(用資源)やガソリンなどすべて抑えられてしまいました。しかし当時の技術者たち、とくに飛行機の技術者たちは、日本の物流や移動手段としてクルマを作らなくてはいけないと考えたわけです。

(日産自動車と合併した)プリンス自動車の前身である立川飛行機の技術者が作ったのがこの「たま電気自動車」です。

工業地帯は戦争ですべて焼け野原となり工業はできない、各家庭には裸電球とラジオくらいしかない状態でした。

しかし、発電所は水力発電で山の中にあるので、どんどん電気を作ることができていました。

アリゲータータイプのボンネット

そこで、余った電気を使ってクルマを動かそうという発想からこのクルマが誕生したわけです。

飛行機の技術者が作ったという痕跡がこのクルマの各所に残っています。例えばボンネットの形状です。この真ん中がヒンジになっており、両方が開くタイプです。

また開けるとアリゲータータイプという名前のごとくワニが口を開いたような形になります。当時はこのようなボンネットのクルマは世の中に存在していませんでした。非常に評判が悪くて、格好悪いといわれました。でも考えてみてください。現在のクルマのほとんどのボンネットはこういう形で開きます。当時このクルマを設計した人はものすごく先見の明を持っているデザイナーです。その人がこれを考えたわけです。なぜか?この方が整備がしやすいのです。

解説をする「名車再生サークル」の磯部雅彦

これは一回でプレスができないので、手で叩いて、いいところだけ残して切ってつなぎ合わせて作っています。それでこのような形状を出しています。

もう一つはフロントウィンドウです。当時のクルマは真っ平らのウィンドウです。今はアール(曲面)のついたウィンドウです。ワイパーやミラーなど保安基準もなかったので真っ平らのウィンドウを使っていました。当時、こういった装備はどのクルマも同じものを使っています。共通性があります。もしこの時代のクルマを今直すのであれば、どこの部品を持ってきても合います。

この他に特徴的なのは、今はウィンカーと言って点滅しますが、当時は方向指示器、(腕が出てくる)ターンシグナルです。これは通称「アポロ」と呼んでいます。この「アポロ」という名前は会社名です。アポロ社が輸入し日本でライセンス生産していました。戦中戦後の頃は当たり前の装備で大型バスにも使われていました。また米国の有名ブランド車「Jeep」で使用されていました。

このクルマは当時とまったく同じ装備にしようということで、同じものを使かおうとして色々と苦労を重ね修理いたしました。アポロ、ワイパー、ヘッドライトがその部分です。このヘッドライトですが、まずレンズカットが今のものと違います。我々が調べたところによると、このレンズは日本でも10枚と残っていないレンズで、非常に貴重なレンズです。おそらくオークションなどに出品したら何十万円という値がつくでしょう。

古いクルマをご存じの方はお気づきだと思いますが、当時通常のクルマのヘッドライトはこんな付け方をしていません。この辺に丸いライトがポコっと付いています。それをわざわざこういう形にしている。これは飛行機の羽、エンジンがついているところをイメージすると判るかと思います。

それからバンパーについているオーバーライダーです。こちら側とこちら側を作って裏から溶接でつなげています。またこれは一枚板で型を作ってありますが、火を入れず叩いて作っています。

次にタイヤです。「タイヤがよくありましたね」と聞かれるのですが、これは文化の違いです。実はイギリスではこのタイヤを今でも売っています。イギリスには色々なクルマがあるので、ほとんどのタイヤが手に入るのです。ですから古いクルマを直したくてタイヤが必要であれば、まずはイギリスで探してみてください。このクルマも当時と同じサイズのタイヤです。またメーカーによっては新しくタイヤを作ってくれるメーカーもあるのでタイヤの調達は可能です。

基本的にこのクルマは直流モーターを使っています。バッテリーを直接抵抗器で可変し、それがアクセルになります。それでスピードをコントロールします。ですので、本当に単純なクルマです。今の「リーフ」と違って余った電気はすべて熱に換えて捨てます。そのためラジエーターのような熱変換機が必要です。

もともと自動車は馬車が起源ですから、木で作ってあります。このクルマも木で作っています。その上に鉄板をかぶせているだけなのです。当時のクルマは当たり前のように、そういう構造でした。

このクルマも同じです。

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