NISSAN REPORT BLOG

RSS
TOP > レポート > ロボット工学の第一人者、大阪大学 石黒 浩 特別教授に聞く   【その1:自動運転が変える人とクルマとの関係】

ロボット工学の第一人者、大阪大学 石黒 浩 特別教授に聞く   【その1:自動運転が変える人とクルマとの関係】

自動運転技術の進化により、新しいモビリティの時代が始まろうとしています。
普段、人間が行っている運転操作を機械が代わりに行う自動運転技術によって、人とクルマの関係はどのように変わっていくのでしょうか?
ロボット工学の第一人者であり、ご自身そっくりなアンドロイドを開発したことでも知られる、大阪大学 石黒 浩 特別教授に、人とテクノロジーについてお話をお伺いしました。

ジェミノイド™ HI-4(大阪大学により開発)

石黒先生のロボット研究は、人とテクノロジーの関係を変えたという点で、自動運転と重なる部分があると考えています。石黒先生は、自動運転は人とテクノロジーをどう変えていくと考えていますか?

僕の研究は人と人の間のコミュニケーションを促進するという目的があります。例えば、人とは喋りにくいけど、ロボットとは喋れるなど、色々な人に色々なメディアを提供することによって、人と人のコミュニケーションがどんどん膨らんでいくというのを一つの理想的な社会捉えて研究を行っています。その理想を達成するために必要なのが遠隔操作技術だったり、自立型ロボットだったりします。

自動運転が目指すところは、自動運転自体ではないはずです。目指す社会像によって方向性はずいぶん違ってきます。

僕が研究しているアンドロイドは、人間の代わりとなるものです。例えば、車で街に出て楽しくなるような、そういう社会を作るのであれば、僕のロボットの研究に近いといえます。単に指示した通りの道を通るのではなく、色々なレストランを紹介するとか、自動車と関わることが楽しいといった、道具というよりもパートナーとして受け入れられるのが一つの理想像と見ることもできます。

もう一つの方向性は、もともと自動車とは移動手段なので、移動する時間やコスト、危険性といった空間的な制約を徹底的に排除する隠れた機械としてデザインするという考え方です。その場合は、安全で信頼性が高く、その存在さえも気づかないような、でも行きたいところには瞬時に移動できるような自動車として設計しないといけません。もちろんそれは結果的に人のコミュニケーションを支援することはできますが、僕のロボット研究とは方向性が違います。

僕のロボットは明らかに人らしい存在感によって、人間の脳が持っている、人を認識する機能をポジティブに活かすコミュニケーションの手段を提供しています。自動車もそういう意味ではインターフェイスを工夫して人と関わりやすいようにするというデザインもあれば、徹底して人が無視できるような、つまりインターフェイスすら持たないデザインにするという工夫もあると思います。

ただ、使用感の無い、インターフェイスの無いインフラを自動車という形で実現できるのでしょうか?電車、エレベーターなどと違い自動車は個別に動きますし、とにかく乗れれば良いと思って人々は自動車を買いません。この自動車が可愛いとか、人々は自動車に個性を見ていますので、先に述べたシナリオのうち、どちらが実用化に近いかといえば、自動車に個性を求める方が近いのではないかと思っています。

ジェミノイド™ HI-2(国際電気通信基礎技術研究所(ATR)石黒浩特別研究所により開発)


自動運転技術は、人間とテクノロジーがより繋がっていく未来において、どのような役割を担っていくとお考えでしょうか?

特に自動運転が一番必要になるのは田舎だと思っています。高齢運転者が、同じく高齢者を事故で傷つけているなど、状況は非常に深刻です。田舎でインフラ機能としての自動運転をやろうと思ったらバスという選択肢があるでしょう。決まった経路だけを動くので、運転の自由はありませんが、高齢者が行かないといけないところには全部路線を張り、確実に移動できる仕組みを作ることも考えられます。

一方で、そういうインフラが整えられないようなもっともっと人が少ないところ、あるいはそもそも移動することが楽しく、移動する手段を含めてもっと楽しく生活したい、そういう要求が強い場所では、自動運転は僕たちが研究しているようなロボットと同じような、パートナーとしての役割を担うと思います。この子がいるから私は田舎でも楽しく暮らしていけるんだというような感じです。

個人的な意見では、高齢者にとって生き甲斐が増えますので、自動車に乗ることが楽しいという方がいい気はしています。自動車とコミュニケーションするだけでも、活動的になろう、外でなにかやろうということになります。

自動運転がパートナーとしての役割を担うようになると、対話サービスが生まれます。僕らのロボットも簡単なサービスは自動でできますが、100%遠隔操作ではありません。それでもアンドロイドが医者の代わりに診断することは出来ますし、遠隔操作技術を用いることで、出来ることはたくさんあります。

例えば、自閉症のお子さんはロボットには喋れるが、人には喋れないという事があります。認知症の高齢者も似たところがあります。そういう対話相手になるときは全部コンピュータで制御するのではなく、最初はボランティアが入ったり、いつもの定型的なトレーニングに入ったら自動で喋らすというやり方をします。田舎の高齢者が運転する車は、色々な対話サービスと融合が出来ますので、運転だけではなく、高齢者が勉強したいとか、困ったことがあるとかいったことを助けることで、高齢者のパートナーになることが出来ると思っています。田舎のクオリティオブライフを保証するツールとして自動車が入ってくるといいなと思います。

(本企画のの第2部は来週公開予定。)

 

 

 

ページトップへ