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ロボット工学の第一人者、大阪大学 石黒 浩 特別教授に聞く   【その2:新しいテクノロジーを受け入れるということ】

ジェミノイド™ HI-1(国際電気通信基礎技術研究所(ATR)石黒浩特別研究所により開発)

自動運転もアンドロイドも新しいテクノロジーです。人間は新しいテクノロジーを抵抗なく受け入れることができるのでしょうか?
はたして、ロボット工学の第一人者である石黒教授は、新しいテクノロジーを人がどのように受け入れていくと考えているのでしょうか。

「その1」では、自動運転が変える人とテクノロジーについてお伺いしました。今回は、新しいテクノロジーに対する人々の受け入れ方についてお話をお聞きします。石黒先生ご自身が研究されているアンドロイドのように、新たなテクノロジーが出てきた時に人々はどのように感じると思われますか?

新しい道具、機械が出てきたら使い方を勉強しないといけませんから、抵抗を感じます。ただ、それは歴史上ずっと繰り返されていることです。
また、新しい技術はもっと抵抗感がなくなっていきます。なぜかというと、人間に近くなっていくからです。例えば音声認識で物が動かせるようになったら、マニュアル読まなくてもいいわけですよね?技術はどんどん人間らしくなっていくので、人間にとっては使いやすくなっていくのです。だから瞬時に受け入れます。昔のパソコンを勉強するのと、スマホを勉強するのでは、スマホの方がはるかにインターフェイスが工夫されています。つまりどんどん使いやすくなる。ユーザーにとって新しい技術はさらに抵抗がなくなっていきます。

そもそも、ユーザーとして抵抗を感じるのか、社会として受け入れることに抵抗を感じるのかは別問題です。人間が唯一新しい技術に対して抵抗を感じる理由は、仕事を奪われるかもしれないという危機感です。ユーザーであるならば、仕事がなくなるか否かということは考えません。もっと勉強しないと今の仕事を続けられないかもしれない、だから新しい技術に対して抵抗感を持つのです。

10年、20年もしたらどんどん音声認識も出来て、もっと人間らしい対話ができて、喋るだけで使えるようになります。そのようなものに抵抗感があるわけがありません。技術に対する抵抗感は視点が違えば全く別の話になるのです。

自動運転の場合、運転を任せてしまうというのは勇気がいります。ためらう人も多いのではないでしょうか?

僕はいないと思っています。免許を取る時のことを考えてみて下さい。自分で免許を取って運転するか、自動運転を選ぶか、どっちを選びますか?今、免許を取る時にオートマ免許が出来て、ほとんどの人がオートマ免許を取っています。僕はミッションのマニュアルがベースだったので、オートマなんて怖くて乗れませんでした。ところが今の人はオートマを選んでいます。

何が怖いって、事故が起こった時に誰の責任になるのかわからないのが怖いのです。例えば電車、怖いですか?怖くないでしょう?事故が起こらないという保証がちゃんとされていますから。例えばオートマの方が便利ですよ、クルーズコントロールを入れた方が良いですよといわれたら、全部そっちがデフォルトになります。運転技術を習得するのと、それを技術で実現しているもの、どちらを選びますか?と聞かれれば、後者を選択するのは明らかです。

ジェミノイド™ HI-1(国際電気通信基礎技術研究所(ATR)石黒浩特別研究所により開発)

石黒先生はロボットの社会的価値をどのように認識させていこうと考えていますか?

ロボットは単純に普及させることが重要だと思っています。ソフトバンクのペッパーのように、たくさん普及させるために安いロボットをばらまくチャレンジが必要です。そこにどんどん色んなソフトをダウンロードをして、色々な使い方が出来るようにしないといけません。それは、パソコンもスマホもできたことですが、ロボットはまだできていません。どこかでロボットでないと出来ないというキラーアプリを作って、それを核にロボットを世界中に広げないといけません。僕はそろそろそのようなコンテンツが出てくると思っています。

まずマスに入れるということが大事ということでしょうか?

マスに入れることと、特殊目的に入れる2つのパターンがあると思います。特殊目的とは、どんなにお金を払っても必要なところ、危険でもいいからそれを使わないと解決できない問題があるところに入れるということです。例えば自閉症や認知症の患者にはロボットでしか話出来ない方がいますので、医療などの特殊目的から入るというやり方も一つあります。
もう一つは、ゲーム機、スマホやパソコンなど誰でも使えるようにして、それさえ買っておけば色々なゲームとして楽しめるとか、インフラとしていきなり普及させるというやり方という2パターンあると思います。

ジェミノイド™ HI-2(国際電気通信基礎技術研究所(ATR)石黒浩特別研究所により開発)

石黒先生が描いている10年、20年先の社会全体の未来はどのようなものでしょうか?

2~3年で人型のコミュニケーションロボットは普及する可能性はあります。ただ、実際には誰も予測できません。自動車とか冷蔵庫にはものすごい強い必要性がありましたので、製品として作られてきましたが、ロボットにはその必要性がありません。

社会も新しい技術に適応しないといけませんので、こちらが適応しやすいものを入れる必要があります。簡単にいうとより人間らしいものは急激に受け入れられる可能性があるということです。人に親和性の高いものが、古いものにとって代わるわけです。それがiPhoneとガラケーの違いです。

僕は、自動車も同様に、動くだけの機能では世の中変えられないと思います。だからさっき言ったようにパートナーになるんだったら、田舎に暮らしながら自動車がいるから人生楽しい、みたいな話にならないと、ガラケーがiPhoneに代わった時のようにはならないと思います。

人間の脳というのは、人の形をしている方が受け入れやすいように出来ています。聴覚は人間の声が聴こえるようになっているし、視覚は人間らしい顔に反応するような細胞がたくさんあります。人間の脳はすべて人間のために作られているので、人間に受け入れられるものは、全て人間に近くなっていくのです。

 

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